がん 生と死の謎に挑む
立花 隆・NHKスペシャル取材班 「がん 生と死の謎に挑む」 文藝春秋社刊
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立花隆さんが NHKのスペシャル取材班・岡田朋敏(ともはる)ディレクターと
2009年11月23日に NHKスペシャル「立花隆 思索ドキュメント
がん 生と死の謎に挑む」 という番組を作り放映したのですが その番組は
とてつもなく質の高い内容と量の取材をしていたので その後 2009年
12月27日 28日 29日の3回に分けて BS1の枠で
がんの謎にさらに突っ込んだ番組が作られ放映されました。
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取材の対象は世界中のトップクラスのがん研究者ですから 普通の
アプローチでは近づく事の困難な研究者達ですが さすがにNHKの
取材班ですから取材に成功していて 世界のがん研究の最先端を
私達は番組を通して知ることができました。
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立花隆さんは この番組の企画意図を「がんの本質を考えるときに一番
大切なことは何なのかという、がんの本質論基礎編を描く。」ことに置いた
そうです。
「がんとはそもそもいかなる病気なのかというがん本質論」に真っ向から
取り組んだ番組であり この本はその番組のメーキング・オブです。
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この本の結論を始めに一言で言ってしまえば「がんのすべては遺伝子を
通して理解する。」ということです。
がんの最先端を理解することに一番欠かせないのは「がんが細胞の病気であり、
遺伝子の病気である」ということを出発点にしなければならないのだそうです。
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立花隆さんの言っていることはわかるのですが、困ったことに私の持っている
「遺伝子」という単語のイメージが古すぎて 話の展開についていけないのです。
私の年頃の人間は「遺伝子」といえば 「メンデルの法則」が頭に浮かび
次にメンデルがやったといわれている「エンドウ豆」の実験が思い出され
さらに3対1の法則に行きつきます。
しかしこの遺伝子と 立花隆さんが取り上げている遺伝子とは全く違うもののようで、
細胞、核酸、塩基、DNA、RNA、ヒトゲノム、遺伝暗号、といった
その他無数にある専門用語が がんの最先端研究の理解を難しくしています。
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まあ、患者の私が がん研究の最先端を理解できなくとも何の問題もないのですが
がん患者を診てくれている臨床医の皆さんが最先端を理解できているとも思えません。
なんでそんなことを言い出すかと言うと 長年会社経営をしていましたから
数多くの新技術をつかった新事業の立ち上げにかかわりました。
新事業を立ち上げるのですから数多くの会議が招集され熱い議論が戦わされる
のですが 私は技術に疎い文化系なのでその新技術に関する初歩的な質問をしても
恥ずかしくありませんから平気で初歩的な質問をします。
そこで判ることは 技術系出席メンバーの少なくない人たちが新技術について
必ずしも深く理解していないこと あるいは全く判ってないことが判明することが
よくありました。
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どうしてそんなことが起こるのかと言うと旧来の技術を使っていた技術者が
その使い勝手の不自由さをなんとか改善しようと研究して
新技術を生み出すのですから 旧来モデルを知悉している人でないと
新技術の活かし方がわからないのです。
新事業立ち上げの中心メンバーは勿論新技術の開発チームですが
事業化するということは ほかのセクションから新メンバーが投入されます。
その人たちは 旧来の使い勝手のわるかった技術のことも 改善された
新技術の真髄も知らないわけで 割り振られた仕事をやるだけです。
割り振られた仕事というのは マニュアルに書かれた作業手順に従う
ということです。
その結果、時には致命的なミスを引き起こしてしまうことがあるのです。
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お医者さんにも同じことが起こって不思議じゃありません。
がんの最先端研究が従来の医学の進歩という概念とは大幅に異なっています。
研究に使う機材も電子顕微鏡からスーパーコンピューターに移っています。
がんの最先端研究者がお医者さんから理学部出身の生化学研究者に移っている
ようにもみえます。
患者の側からみるとこの流れはとても危険にみえます。
最先端研究はもちろん意味のあることではありますが、最先端研究の成果が
直ぐに臨床部門に反映されるというのは危険です。
最先端研究は発表されたあと あーだ、こーだといった検証する期間を経て
技術としてはやや枯れた時期に臨床に反映されるぐらいがいいのではないかと
思うのです。
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このことについて これからしばらく考えていきたいと思っています。